第2章 再開のスターティングブロック!!
遥は今はそっとしておいた方がいいという結論に達し、一行は海が一望できる丘の上の東屋へと場所を変えた。
「へぇ~、江ちゃんも岩鳶高校に入ってたんだ~。」
「江って呼ばないで!‘こう’って呼ばれてるんだから!」
「えぇ?なんで?戦国武将、浅井長政の三女と同じ名前の江でしょ?」
「そうだけど…普通に読めば‘こう’なんだからそこは素直にこうって呼ぼうよ。それが優しさってもんじゃないの?」
にらみ合う江と渚。大事になる前に止めなければとおろおろする水沙音の横で本題に入るべく真琴がやんわりと声をかける。
「えっと、そんなことより…」
「そんなこと!?」
「ごめん…でも、何しにハルの家に?」
とたんに江の目が大きく見開かれ、真琴から目を背ける。
「それは…お兄ちゃんのこととか聞きに…?」
「凛、やっぱりオーストラリアから帰ってきてるの?」
「先月帰国して、この春から鮫柄学園に…あそこ全寮制だからうちには帰ってきてないですけど…」
「鮫柄って…あの水泳強豪校?!」
風に乗って波が崖に打ち付けられる音が聞こえる。さぁっと風が吹き、潮の香りが強くなる。
「水沙音先輩から聞いてませんでしたか?」
「聞いてないよ?」
「みーちゃんそんな大事なこと黙っていたの?」
一気に視線を向けられ圧迫感にさいなまれる。
水沙音が帰国したのは高校一年の時で、凛が帰国する時も鮫柄に行ったことも確かに知っている。しかし、それを言わなかったのは、当の本人に口止めされていたから。
そんなこと、言えるはずもなく。