第1章 契り(加州清光)
「あの日、何もわからないまま飛んだ戦場で、清光ボロボロになって…私、すごく…怖かった」
「うん…俺、ボロボロでカッコ悪かったよな」
ゆっくり、優しく背中を撫でる。
向き合って主の本音を語ってくれるのは初めての事だった。
「私ね…歴史の改変は良くないとか、国のため政府のためとか、そんな事何度言われようと……目の前で清光が傷付く方が嫌なの!もし私の命令で清光が死んじゃったらって思うと、怖くて…私、」
それきり言葉は途絶え、ぽつり、ぽつり。静かに落ちる大粒の涙が俺の赤い襟巻きを濡らしていた。
何故だかその雫に、心まで溶かされてく気さえして。
言いようの無い気持ちのままに、今までより力を込めて抱き締めた。
きゅう、と縋り付くように羽織りを掴む主。
「清光、どこにもいかないで」
ああ、やっと分かった。
俺、チョー愛されてんじゃん。