第61章 どちらさんでしょうか
仕掛けに近寄る影に、私は目を向けた
『……案外早かったな、こんのすけ…』
長谷部「……主?」
『静かに…!今大事な時だから!』
巴形「……そうゆう主の声が一番大きいが…」
巴形が何か言っている気がしたが、私はこんのすけを逃すまいと、ゆっくり襖の隙間に手を入れ勢いよく襖を開けた
『こんのすけ捕まえたぁぁあ!!!…………って、あれ?』
?「……!」
こんのすけの割には大きい…
そう思い、ぎゅっと抱きしめた腕を見ればそこには鳴狐が居た
『……鳴狐?』
鳴狐「……うん」
私が強く抱き締めているせいで、困り顔をしている鳴狐
狐はかかったけども…これは狐違い……!!
狐であって狐じゃない…!
私に捕獲された鳴狐を心配したのか、お付の狐が近寄ってきた
お付の狐「鳴狐!大丈夫ですか!?」
鳴狐「……大丈夫」
『……ごめん、鳴狐…こんなはずじゃなかったんだけど…って、なんで油揚げに寄ってきたの?』
鳴狐「…勿体ないから、いなりを作ろうかと思った…」
『…………そ、そうか…』
廊下にお供えしてある油揚げが勿体ないからいなりを作ろうとしたのか……って、いやいや、おかしいよね!
普通廊下に置いてある油揚げを使おうとしないから…!
ま、まぁ…一応お皿には乗ってるけど…
その騒ぎに、長谷部や巴形も部屋から出てきた
長谷部「主…!何事ですか!」
巴形「おや」
『……いや、こんのすけを捕獲しようと思って油揚げを置いておいたんだけど…鳴狐がかかった』
抱きしめたまま長谷部に事情を説明していれば、鳴狐がもぞっと腕の中で動いた
鳴狐「…苦しい」
『はっ…!ごめん鳴狐…!』
私は慌てて鳴狐を解放した