第29章 帰ろう、本丸に
長谷部「早く主を戻せ…然もなくば貴様を斬る」
長谷部は自らの鞘に手を添えれば大包平を睨んだ。
大包平「助けてやったと言うのに、酷い有様だな…やる気なら相手をしてやろう」
大包平は長谷部を睨めば、同じように鞘に手を掛けた。
そんな姿に太鼓鐘が口を出した。
太鼓鐘「やめろって!そんなお前らが斬りあったって主は戻ってこない…っ」
太鼓鐘の言葉に皆は考えたように俯き、長谷部と大包平も争いを止めた。
燭台切「そうだね…貞ちゃんの言う通りだよ。ここは、主の無事を信じて帰りを待つのが鉄則じゃないかな?」
石切丸「…主が笑顔で戻ってこられるように、皆で待とう」
三日月「うむ、それがいいな」
皆が納得すれば、前任が居なくなった安心感に皆は腰を降ろして一息ついた。
そんな皆の様子に、鶯丸は人数分のお茶を入れ始めた。
鶯丸「疲れただろう、皆飲むといい」
鶴丸「あぁ、ありがとうな」
一期「私は、部屋にいる短刀達を呼んできます。きっと心配しているはずですからね」
一期は部屋で待たせている短刀達を呼びに行ってしまった。
広間に残った皆は、あまり明るい表情ではないが気持ちを落ち着かせるようにお茶を一口飲んだ。
それから数時間、なまえのいない本丸には冷たく暗い雰囲気が流れ、誰1人とも口を開こうとはしなかった。