第28章 前任の憑依
〜 空白の世界 〜
『……やだ……やだやだやだ…』
薬研が殴られた所も見てしまった。
私が殴ったんだ……薬研を…。
私の身体…使わないでよ……やだ…
何も出来ない私は、涙が溢れて止まらなかった。
そして大事な刀剣が傷付けられているのを見るのが辛すぎてどうしようもなかった。
次々と前任の腹癒せの為に殴られる刀剣男士。
薬研の次は厚、次は浦島、次は物吉。
短い刀を目掛けて襲い掛かる前任。
見る限り、もっと小さい短刀は部屋に居るのだろう…お願いだから被害を少なくして…私が戻るまではっ
すると、目の前に眩い光が現れた。
『……!?』
?「そんなに泣くでない…」
『だ…れ……?』
光と共に現れたのは、華奢で赤と黒を基調とした人物が立っていた。
?「我が名は小烏丸。政府とやらに頼まれて来たのだが、何かお困りのようだな。この父が来たからには、心配することはない」
そう言って、小烏丸という人物は近くに寄ってきたと思えば泣きじゃくる私を優しく抱き締めてきた。
『……っ、助けて…っ……皆を…』
小烏丸「ふむ、子らも主も助けてやろう。だから安心するといい」
『小烏、丸……』
小烏丸「主、お主は綺麗な心を持っているな…穢れのない、綺麗な心を。悪など、飲み込んでしまえばいい…」
『悪を……飲み、こむ……』
なまえは泣きつかれたのか、安心したように小烏丸の胸で意識を飛ばした。
小烏丸「おやおや…この我を差し置いて…、眠ってしまわれたか…。でも安心するんだ…必ず助けよう」