第82章 温泉旅行
風呂場に入ってくれば先に身体を流そうと椅子に座った
『長谷部!背中流してあげる!』
長谷部「えっ…いや、主にそんな事させる訳には…!」
『いいじゃん、たまには!二人きりなんだし!』
長谷部「……はい。じゃあお言葉に甘えて…」
長谷部は少し頬を赤くしながら私に背を向けた
なんだその反応は…!
長谷部ってこんなに初々しい子だったっけ?
不覚にも可愛いなんて思ってしまった…
と、とりあえず背中流してあげよう
私は手ぬぐいに泡を立てては長谷部の背中をそっと撫でるように滑らせた
『力加減大丈夫?』
長谷部「はい…。まさか主に背中を流して貰える日が来るなんて…もう二度と無いかもしれませんね」
『大袈裟だよー、いつでも流すよ?』
長谷部「いつもは邪魔者が…」
邪魔者…!?あ、他の刀剣達のことかな?
まぁ確かに二人の時間って全然ないし、いつも誰かがそばに居るから長谷部もあんまり甘えられないよなぁ…
もう少し一人一人の時間を大切にするのもいいかも
『…まぁ、確かに長谷部との時間はあんまりなかったよね?ごめんね…刀剣が増えてから何とも時間の取り方が分からなくて…』
長谷部「いえ!主が謝ることではありません。主はよく周りを見ていて他の刀剣達にも恵まれて…立派な主ですよ」
『長谷部…』
待って、やめて…そんなこと言われたら泣きそうになる
こんなダメダメな主でもこうして慕ってくれる刀剣達には日々感謝だな…もちろん長谷部にも。
背中を洗う手を自然と止めては色々考えさせられる
長谷部「…主?」
手が止まった私の異変に、長谷部はこちらを向いた