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たった1度

第8章 ~ 夢の続き ~


家の近くまで送ってもらい

『ここで大丈夫。』と言うと

彼は少し恥ずかしそうに

『今度・・ご飯誘ってもいい?』

と聞く

反射的に『うん・・・。』

と短く答え別れる



きっと彼とはもう会わないのは分かってる


メールが来てもきっとあたしは返事をしない


彼と付き合ったら幸せになれるかもしれない


でも彼の手は潤の手と似てるから


あの細くて長い潤の綺麗な指に似てるから


彼と一緒に居たら


あたしはいつも潤を思い出さなくちゃいけない


きっと手を繋ぐ事さえ躊躇ってしまう



潤を思い出してしまうものの近くに居るのは



怖かった








古いマンションの3階

重い足取りで階段を登ると

自分の部屋の前に誰かが居る




ポケットに手を入れ

少し俯き加減に玄関のドアにもたれてる


耳にかかるくせっ毛

長い足を持て余し気味に軽く組む

その見覚えのあるシルエットに

その場から動けなくなる




どうして?




どうしてここに居るの?








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