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たった1度

第9章 〜 エピローグ 〜


潤 「まぁ今度ちゃんと改めて挨拶行くよ。」


出来た料理をテーブルに運びながら潤が言う


 「挨拶?」

潤 「お嬢さんを下さい的な?」

 「何言ってんの(笑)」

潤 「いやいやマジで。いずれちゃんとするつもりだよ、俺。」



思いがけず真剣な顔で言う潤が嬉しかった



それからご飯を食べながら色んな話をした



高校の頃の先生の話、


文化祭や体育祭の思い出話


これから始まるツアーの話


ニノがあたしの気持ちに気付いてた事


翔ちゃんが潤に話した事





そしてあの夜の事




ご飯を食べ終え、ふたりソファに並び話す




あたしの右手は潤の左手に包まれてる




潤 「ごめんな・・・。あの時おまえ苦しかったんだよな・・・。」

 「んー・・・苦しかったけど、幸せだったよ。」

潤 「・・・・・・・。」

 「ほんとに・・・幸せだった。泣けるくらい幸せだったよ。」

潤 「あの時泣いてたのは、幸せだったから・・・?」

 「覚えてるの!?」

潤 「いや、断片的にしか覚えてねーんだけど・・・。涙が流れるのを見た気がしてた・・・。」

 「そっか・・・・。」



繋いだ手が離れ


潤がソファの上に胡坐をかいて


あたしの方を向く




潤 「ごめんな、全部覚えててやれなくて。」

 「うん・・・。覚えてない方がイイと思ってた・・・。」

潤 「もう、全部忘れない・・・。」



あたしの手をとりそっと指に口づけをしながら言う




潤の唇が触れたその指から




全身に幸せが広がっていく






その後、ふたりして緊張しながらベッドまで行く



あたしを見下ろしながら



「ヤバいな・・・俺あんま余裕ないかも・・・。」



そう苦笑いしながら言う潤に



「お手柔らかに(笑)」



と答えると




長い長いキスをして




ふたりで笑い合った





たった一度でイイと願った奇跡が



今またあたしの目の前にある



この先もあたりまえになる事はなく



きっと何度も奇跡を実感する




この目が




この声が




この手が




あたしに奇跡をくれる



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