第9章 【番外編】黒猫と三毛猫2
side黒尾
壁の向こうからシャワーの音が聞こえる。
くそっ…反応すんな俺!
シャワーを浴びている所を想像してしまい、危うく火傷するところだった。
困った奴は見捨てられない。
昔からそうだ。
結局今回も傷心の三毛猫拾っちまった。
なーんか放っておけねーんだよな。
苦しそうに泣くやつを。
カチン
コンロの火を止め味見をする。
うん、悪くない。
皿に盛って…っと。
後は汁とご飯。
盛り付けていればきい、と浴室の扉が開く音がし、ひょこりと莉奈が顔を出した。
「お風呂、ありがとうございます。」
「おう。飯できてるから手伝えよ。」
「はーい。」
頭にタオルを乗せたまま莉奈はとてとてっと近づいてくる。
「ってお前下は⁈」
俺、ジャージ渡したよな⁈
そう聞けば、きょとんとした顔をして莉奈が答えた。
「おっきすぎて裾引きずるからいらない。」
…だからさ。
そこは履いてくれよ…
お前のためじゃなく俺の理性のために。
「あ、これ洗濯お願いしまーす!」
こいつはちゃっかり洗濯物を俺に渡し、キッチンに向かっていく。
「センパイ、お腹すいたんでご飯食べましょう?」
こいつ…
少しくらい警戒しろって…
背中を向けリビングの方へと歩き出す莉奈。
俺は、その背中を抱きしめていた。
「少し、危機感持ってくれよ…
俺だって男なんだから…さ。」
声のトーンを落とし、耳に声を吹き込む。
ぴくり、体を震わせ頬を真っ赤に染める莉奈。
湿った髪の毛をかき分けうなじを晒すと、そこに唇を寄せる。
「…っ」
小さく悶える姿。
ふるり、ふるりと体を震わせながら莉奈は俺を見た。
「センパイ…
お腹空きすぎて倒れそう…」
いやーお兄さん笑ったね。
腹抱抱えて笑った。
「センパイ笑いすぎです。」
そう言われても笑いは止まらねえ。
やっと笑いが止まった頃、俺は莉奈の頭をぽんと撫で、言った。
「じゃあ、リクエスト通りメシにするか。」