第8章 【番外編】黒猫と三毛猫。
side黒尾。
ぐずり、ぐずりと泣く三毛猫。
そりゃあな?失恋後だから泣きたいのはわかる。
けどさ…
目の前を見ればリエーフと美優が行為中。
下に目線を外せば三毛猫の谷間…っつか、下着までバッチリ見えてるこの状況。
いっくら空気が読める俺でも流石に…な。
少し腰を引いたくらいじゃバレバレだったらしく気づいたらしい三毛猫が涙目で俺の方を見る。
まるで、「信じられない!」って顔だ。
俺だって健全な18歳男子だ。そりゃあ勃つに決まってんだろ。
「流石にそろそろまずいから行くぞ…」
そう促して三毛猫を立たせた…
けれど、三毛猫は俺が手を離すとぺしゃりと地面に落ちていく。
こいつ…
腰抜かしてやがる…
「仕方ねえな…」
俺は三毛猫を抱き上げ、誰もいない場所を目指した。
ーーーーーー
結局、移動した先は俺の車。
フラットにしたままの後ろの席に三毛猫を座らせる。
「ほら、水。」
途中自販機で買った水を渡せば、「紅茶が良かった…」と文句を言う。
買ってやっただけありがてえと思え。
流石にこれじゃあ木兎達送ってやれねえな。
そう考えて俺は木兎にメッセージを送った。
メッセージを送り座席にスマホを置けば、三毛猫はふうとため息をついた。
「そういやあ名前、聞いてなかったな。俺は黒尾鉄朗。去年の音駒の主将。」
「1年、一ノ瀬…莉奈。」
自分の名前をつぶやいた三毛猫…もとい莉奈は受け取った水を入れちびちび飲み始めた。
静かな車内。
こいつが落ち着いたんだったら合宿に返してやるか。
そう思った時、隣から小さな声。
「ありがと…ございました。」
「ん?なんで?」
そう、聞き直せば莉奈は俺の方を見ながら真っ赤な顔で呟く。
「私1人だったら…きっともっとこじれさせてた…だから。」
へえ、わかってるじゃん?
でもきっとこいつ、からかったら面白えんだろうな、と俺の意地悪心がむくむくと大きくなる。
「なにー?声小さくて聞こえねえなー。」
さーて、どんな反応するのかね、こいつは。