第7章 波乱の7月合宿。
がむしゃらに走った。
体育館へ向かう道を、スリッパをぱたぱた鳴らしながら。
1つめの体育館は電気がついておらず人の気配もしない。
2つめも同じ。
1番奥にある体育館の入り口から明かりが漏れ出ている。
あそこだ。
私は入り口めがけて一目散に走り出した。
けれど、私が走り出すよりワンテンポ早く私の腕は掴まれた。
「美優っ!待てよ!」
『離して、クロ。』
私を追いかけてきたのはクロ。
手を離そうともがくけれどクロは離してくれない。
『離して!』
「嫌だ、離さねえ。
お前さ、泣いてるじゃん。
泣いてるやつ放っておけねーって。」
いつのまにか私の頬は涙でびしょ濡れ。
次から次へと涙が溢れて止まらない。
「胸、貸してやるから。」
クロはそう言って私を胸の中に閉じ込める。
出ようともがいても離してくれない。
『なんで…なんでクロなの?』
どうして今、抱きしめてくれるのはリエーフじゃないの?
苦しい
苦しい
リエーフに会いたいの。
ギュッてされたいの。
いつもみたいに「大好きです」って言って私だけに笑いかけて欲しいの。
ほとんどのものを諦めていた私のたった1つ。
失ったらきっと立っていられなくなる。
『くるしーよ…クロ…』
「うん。」
『どうしたらいいのかわかんない…』
そう言う私の背中を、クロは優しくトントンと叩く。
「泣きたい時は泣けよ。一緒にいてやるから。」
クロが優しすぎて溢れる涙が止まらない。
「美優、そんなに苦しいなら、俺にするか?」
クロの優しい声。
あったかい手。
寂しくて、寂しくて、私はクロの胸にすがりついた。