第7章 波乱の7月合宿。
2人が指差す方をみれば、私が来たことに気付きながらもその場から動けなくなっているリエーフ。
そしてその腕には、音駒のジャージの女の子が絡みついていた。
その子には見覚えがあった。
目の下で切りそろえられた前髪。
肩までのライトブラウンの髪は今日は2つに結ばれている。
くりくりの目に、赤みを帯びた頬。
可愛らしい、今時の女の子。
そう。
少し前に研磨に送ってもらった写真の子が、リエーフの腕に絡みつきながら楽しそうに笑っていた。
つきんっ
少し心が痛い。
「あれ、音駒の新マネだって。ここ来てからずーっとあんな感じ。」
蛍が言う言葉に、つきん、また、心が痛む。
そっか…あの子か。
ざわり、ざわりと嫌な感情が渦巻き始める。
それを振り払うよう、私は大きな声を上げた。
『リエーフ!差し入れなくなっちゃうよ!』
その声でやっとリエーフは私の元に近づいてきた。
女の子も一緒に。
「美優さん、今日きてくれたんすね?」
『…クロと木兎が来るって言ったから…』
少し目線を外しながら言えば、しょーよーがリエーフを呼んだ。
「おーい‼︎リエーフ!デザートなくなっちゃうぞー!」
リエーフは困った顔をしながら私の顔色を伺う。
『いっといで?リエーフ。』
そういえばリエーフはぱああと顔を綻ばせ、しょーよーの方へ走り走り去っていた。