第1章 卒業、そしてはじまり。
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『ふう…』
「んまかった…」
いっぱい食べました。美味しかったです。
なんて人並みの感想が頭に浮かぶ。
それくらいたくさんの味に触れて語彙力が低下中。
「美優は4月から調理師の専門学校にいくんだからいろんな味に触れなくちゃ。」
『本当にありがとうございます。』
ぺこりと頭を下げれば、2人がくすりと笑った。
「美優には頼み事もあるからね。」
ん?
頼み事?
不穏な言葉に顔を上げればリエーフも不思議そうな顔をしている。
「実は…」
良彰さんから告げられたのはとんでもないことだった。
「『ロシアへ出張⁈』」
見事にリエーフとハモってしまった私。
良彰さんのオフィスチームが関わっているプロジェクトが別事業から認められたらしく、別事業の方々からプロジェクトの貢献のため現地へ飛んでくれとお達しがきたらしい。
ちなみにロシア語がわからない良彰さんのためにレイラさんは付いていきたいらしいのだが…
『ちなみに期間は?』
「1年とは先方には言われているんだけどどうなるか…」
『ってことは…リエーフ、ロシアに行っちゃうの?』
リエーフと離れ離れになるなんて…
どうしよう…と思いながらリエーフの方を向けばリエーフも困り顔。
「美優さん…」
「で、ミユにお願いがあるの。」
しんみりした2人を他所に明るい声。
そう言うレイラさんの顔はなぜか晴れやかだった。