第28章 ねんまつねんし、再。〜第三体育館組、集合前夜〜
アラームの音で目が覚める。
部屋の寒さに思わず体を震わせるが、ゆっくりしてはいられない。
朝ごはんの後に明日みんなが来る時のための布団やタオルなどの使うものの準備、あとはおせちの今日の分の仕込みもあるから…
眠い目を擦り部屋の扉を開く。
ん、あれ。
ふわりと漂う香りに首を傾げながらキッチンに向かえば、そこにいたのはリエーフ。柔らかなお出汁の香りはお味噌汁のもの。あとは最近綺麗にできるようになった卵焼きにはカニカマとほうれん草が入っている。
私が名前を呼べば、私が起きたことに気づいたリエーフが柔らかな笑顔でこちらを向く。
「美優さんおはよ。早く起きちゃったから軽く朝飯作っちゃった。玉ねぎ薄く切って水に晒してるから、後で豆苗とツナでサラダ作っちゃうね。あとツッキー起きたら鮭焼いて終わり。」
残りの料理の説明をするリエーフにぎゅうと抱きつけば、そのまま背中に手が伸びて私を抱きしめてくれる。
「なあに、美優さん。」
『ん……朝、さむくて…』
抱きついた体がリエーフの体温で温まっていく。すりすりと顔を擦り寄せながら言葉を続ければ、上から柔らかな笑い声が降ってくる。
「美優さん、少しだけ我慢。ね?」
諭すような優しげな声に、ぎゅうと抱きついたまま頷けば、背中を抱く腕の力が強くなる。
いつもなら逆。先に我慢できなくなるのはリエーフの方なのに。
『…リエーフ、余裕そう。』
「…余裕?」
私の小さな呟きが届いてしまったようで、背中に回った腕が緩んだかと思うと、寝起きでいつもよりふわふわの髪の毛を梳くように頭を撫でる。
と思ったら、背中を支えるもう片方の手が私をさらに引き寄せる。
ごりっ
うん、当たった。
お腹にすごいのが。
朝だからしょうがない。そう思うけれど、意識してしまえば自分の頬が染まっていくのがわかる。
「ね、わかったでしょ。余裕なんてないの。」
包まれた腕の中で何度も頷けば腕の中から解放されながら柔らかな唇が重なる。
「今日はここまでね。みんな帰ったら寝かさないから覚悟してて。」
細められた瞳の奥の深い輝きに、頬をさらに染め上げながら小さく頷けば、リエーフはいたずらっ子のような顔で笑ったのだった。