第28章 ねんまつねんし、再。〜第三体育館組、集合〜
『じゃあ木兎の分も年越し蕎麦作るよ?もしかしたらみんなは先に食べちゃうかもしれないけど、ちゃんと木兎の分は取っておく。うちに来る時に電話してくれたら木兎が来た時にすぐ食べられるようにしておく。』
「マジで!美優サンキュー!じゃあできるだけ早めに抜けてくる!美優大好きー!」
液晶越しの満面な笑みのラブコールに苦笑していれば、背中から伸びてきた腕に包まれる。
「美優さんは俺のっす。誰にもあげません。」
不機嫌そうな声に振り向けば、前髪の降りたリエーフが唇を尖らせながら私の背中に張り付く。
『リエーフ遅い。8時からだって話したでしょ。』
「それはごめんなさい。でも木兎さんに好きって言われてた…」
『それは木兎が大晦日に用事があって遅れてくるのに合わせて年越しそば作るからテンション上がってるだけ。そういうこと言うとリエーフ1人だけ年越しそば作らないからね。』
振り返っていた顔を前に戻して画面に向き直れば、頬に擦り寄る力が強くなる。
「……ごめんなさい。」
素直に謝る声。ふう、と息を吐き出すと、そっと乾いたばかりの頭を撫でた。
『ってことは木兎が31日の夜ね?予定が決まってる他の2人は?』
「んー、多分31日の昼くらいかなと思うんですが、俺木兎さんいるつもりで考えてたんで美優さん家まで電車ですね…」
「赤葦、俺車出すから迎え行くぜ?莉奈来るなら莉奈回収してからになるけど。」
「構わないですよ。むしろありがたいです。」
「私もちゃんと説得しますー!美優さんの名前出したら大丈夫だと思うけど…」
「ツッキーは?1番遠いけど大丈夫そ?」
「まあ大丈夫デショ。灰羽に心配されたくないし。それにこっちも美優さんの名前出せばなんとかなると思う。」
学生組のお母さん、私に絶大な信用を置いているようで…ありがたいような不安なような…
モヤモヤと考えていればクロのよし、の声。
「とりあえず話は終わり。決定したこととか相談事はメッセージアプリ、それで難しい時は今日みたいに電話な。」
クロの締めの言葉にそれぞれ挨拶をすれば、いなくなっていく画面越しのみんな。自分の端末を操作し電話を切れば、背中にくっついていたリエーフから名前を呼ばれる。
振り返れば唇に熱。
先ほどのやり取りですっかりむくれたリエーフの膨らんだ頬に唇を寄せると、ご機嫌を戻すために改めて体を抱きしめたのであった。