第26章 音駒がくえんさいっ!
「てつろーさん!美優さん!いらっしゃいませ!」
1年教室に向かえば、浴衣にソムリエエプロン…よく時代劇で観るお茶屋さんの売り子の様な格好で出迎えてくれたのは莉奈ちゃん。
内装は事前に聞いていた様に縁日を模した形。
提灯や屋台風の飾り付けがなんだか可愛らしい。
屋台の様な販売ブースには焼きそばとフランクフルト、唐揚げが並んでいる。
それぞれを買い、用意されていた席に座ると、莉奈ちゃんが給仕…いや、私たちと話をするために隣に並ぶ。
「てつろーさん達、リエーフ先輩見てきました?」
『んーん、まだ。この後に行く予定。』
「あれは見ておくべきですよ。あの赤のリップって美優さんのですよね?」
「は?リエーフ口紅まで塗ってんの?」
あの時、秘密とはぐらかされた赤いリップ。
ちゃんと塗っていることが嬉しくて口元が緩む。
でも、お化け屋敷で赤いリップを塗ったリエーフ…
何となくだけれど、全容は見えてきた。
気にする様なことではないんだろうなとほっとしたまま唐揚げに齧り付けば、じゅわ、と肉汁が染み出す。
美味しい
え、美味しいんですが…
多分感動が表に出たのだろう。
莉奈ちゃんが嬉しそうに笑う。
「言ったでしょ?うちのクラス料理上手がいるって。」
高校1年生。侮れない…
お腹がいっぱいになってしまいそうだからと5個入りを1つ買ったのは間違いだった。もう一つ…いや、リエーフの分も買おう。
莉奈ちゃんに追加の注文をするが、ちょうどなくなってしまったらしい。追加の連絡はしているらしく、そろそろ揚げたてがくるようだ。
他のものを食べながら待っていれば、可愛らしい声と共に教室中に唐揚げの良い香りが漂ってきた。