第25章 新学期、はじまり
「そういえばなんですけど、赤系の口紅借りてもいいですか?」
えっちなことをした次の日。朝食終わりにリエーフが切り出す。赤系のリップ…あったっけ。
「前唇に合わないって言ってたやつありませんでしたっけ?」
リエーフに言われて思い出す。前に発色が良く落ちにくいで話題の韓国コスメブランドのティントを買ったのだが、塗って数時間置くと唇が乾燥してしまうため泣く泣くお蔵入りになった赤系のリップのことを。
『あるよ。仕舞ってるから取ってくるね。』
食べ終わったお皿を流しに置き部屋に戻ると、使っていないリップを置いている棚の引き出しを開く。奥の方にある、リップの色のパッケージにロゴが書いてあるそれを取り出し、そのままリエーフの元に戻った。
『これでしょ?はい。』
持ってきたリップを差し出す。しかしリエーフは受け取らずにじっとこちらを向く。リップを受け取らないことに首を傾げれば、リエーフは私を見つめながら柔く自身の唇をなぞった。
「塗って?」
唐突なお願いに思わず目を瞬かせる。言われた言葉の意味に気づくと思わず頬に熱が灯った。
こうなったリエーフは絶対に引かない。椅子に座ったままのリエーフに一歩近づくと目元に手をかざす。私の思惑に気づいたらしい。瞼がゆっくりと閉じればリエーフの口端が緩く弧を描いた。
ティントの蓋を回して開き、付属のチップを引き出す。空いた左手をリエーフの顎に添えると、少しだけ上に押し塗りやすい角度に変える。
『唇、少しだけ開いて。』
言った通りに開いた引き締まった唇
その上をティントの液が乗ったチップを艶やかに動かせば、鮮やかな赤に染まった。
レイラさん譲りの白い肌に真紅のリップが映えて、思わずその顔を見つめれば、閉じられた瞼が開く。
緑と赤のコントラストに思わず息を呑めば、再び唇が弧を描いた。
「美優さん、取れないか試してもいい?」
目を細め艶やかに笑うリエーフ。こく、と頷けば真紅の唇が私に触れる。優しく触れた唇がすぐに離れていけば、リエーフの親指が伸びてきて私の唇に触れた。
「本当だ。取れてない。」
これ借りますね。そう言って私の手から抜けていくティント。何に使うのだろう。沸いた疑問を伝えれば、リエーフの人差し指が真紅に染まる唇に押し当てられた。
「秘密、です。」