第25章 新学期、はじまり
次の週からは、今度はリエーフが忙しくなる番。
学園祭の準備で部活の後も学校に残っているらしく、帰ってくるのは夜も深まった頃。今度埋め合わせはするので…と家事がやれないことを謝ってきたが、できない時はお互い様なので気にしていない。
しかし、あまり自宅にいないはずのリエーフに話題の激安ネットショップから大きめの荷物が届いた時は驚いた。
買い物なんて個人の自由だからあまり聞いてはいけないのだけれど、こちらもリエーフを預かっている身。一応聞いてみたら学園祭で使うという正論を言われ、それ以降は踏み込む隙を与えてくれなかった。
本人のお小遣いから出したものだから口出ししてはいけない。でも、何かを買う時は毎回報告を受けていたから、なんだか不安になってしまって…
それをつい、学祭に行くための打ち合わせをしていたクロに言ったら、クロが少しだけ考えて言葉を発した。
「まあ、リエーフだって何かしら考えてるだろ。お前は心配しすぎ。」
『そんなこと、わかってる…わかってるから本人には聞けないんじゃない。』
ため息を吐く私にいつも通りの不細工な笑いを溢すクロ。
「学祭で使うってんなら学祭で確認すりゃいいじゃねえか。あれだろ?リエーフお化け屋敷だろ?何かしらの衣装とかじゃねえ?」
『かも。そういえば莉奈ちゃんの方は衣装どうなった?』
莉奈ちゃんのところはお祭り喫茶。浴衣を持っていない子がいたようなので、私のを貸したんだけど…
「おう、あれな。ちゃんと着れたみたいだぜ。助かったってよ。」
前に買った、ワンピースと甚平の上のセットに帯がついている仕様の浴衣。着付けができるようになったため、箪笥の奥に眠ってしまっていたものを今回引っ張り出したのだ。
莉奈ちゃんには、浴衣を貸した子にそのままプレゼントしてほしいと伝えてある。あまり着てあげられない私に代わって、これからその子にたくさん着てほしいな。
『ならよかった。じゃあクロ、開場の10時に間に合うように9時までには準備終わらせておくからよろしく。』
「おう。遅れたら置いていくからな。」
『う…気をつけます。』
「家出る頃に連絡入れる。じゃあ土曜日な。」
電話を切れば小さくため息。不安が現実になりませんように。
ただそれだけを願った。