第1章 卒業、そしてはじまり。
電車に乗って約20分。私達は新宿駅の中を歩いていた。
「今日、晴れてよかったですね。」
『そうだねー。で、どこ行くんだっけ?』
えっと…と言いながらリエーフはスマホのメッセージアプリを開く。
「ここなんですけど…」
リエーフが差し出した画面にはそこそこ有名なホテルのブッフェバイキングの記事。
『うそ…』
「だって美優さんの卒業のお祝いですよ?」
驚く私を他所にリエーフはルンルンで歩いてるけど…
知ってたらもっと入念に下調べしてたわよ…
「母さんも父さんも美優さんと食事だって張り切ってましたよ?」
そう。
今日はリエーフの家族との食事会。
「ミユの卒業を祝いたいの♡」とレイラさんに押し切られ、外での食事になった。
『だから綺麗めワンピース指定だったのね?』
そう言う私の服装は淡いピンクのシフォンのワンピースにブラウンのストラップパンプス。
お正月に購入したトレンチコートを着ている。
髪の毛はアップでまとめて、メイクもしっかり目に。
それを見たリエーフはにこりと微笑む。
「今日も美優さん可愛いです。」
そんなリエーフは、ダークグレーのワイシャツに黒のジャケットにシルバーのネクタイ。
髪の毛をワックスで遊ばせた姿は本当に16歳か…と疑うくらい格好良い。
『リエーフだって格好良いよ…』
「それに…」
リエーフは私の首元に手を伸ばすとしゃらりとネックレスの鎖を撫でた。
「付けてきてくれたんですね?俺が渡したネックレス。」
クリスマスにもらったネックレス。
今日の服装に合うからって付けてきたんだけど、リエーフは嬉しそうだ。
「やべっ!遅れそう!」
そんなリエーフが腕時計を見ると時間は集合時間である11時5分前。
「美優さん行きましょう!」
『うん!』
リエーフは私の腕を引きながら前を走り出す。
それに引っ張られる形で私も必死になって走った。