第23章 今年も夏休みは終わらない⁈〜4日目、東京!〜
「たまごやきのつくりかた、教えてよ。」
聞けば、何度やってもスクランブルエッグになったり巻きがうまくいかなくなるらしい。
どうせ今日は和食だし、実際目の前で見たほうが早いと思いお手本を見せることに。
『まずフライパンはしっかり熱する。』
熱してる間に人数分の卵を割り、顆粒だしをさらさらと入れ、菜箸でかき混ぜた。
『出汁を入れてしっかりかき混ぜる。白身がしっかり混ざり切るようにね?』
卵液が混ざったのとフライパンが温まったのはほぼ同時。
油を薄く引いた後、フライパンに卵液を流し込み薄く広げていくと、早くも卵液が温まり固まっていく。
『ここからは時間との勝負よ?
卵液が固まりそうなところで巻くと接着剤みたいにたまごがくっつくから。』
そう蛍に話をしながら手前の固まってきた方から菜箸でくるくると巻いていく。
端の方まで巻いたら、また卵液を流し薄く伸ばしながら巻いていく。
ある程度の厚さになったらまな板に取り出し同じ作業をもう一回。
2本の出来上がったたまごやきを切り分けていれば蛍が呟いた。
「僕、熱するのが足りないのかも。」
『フライパンはしっかり熱さないと変に張り付いちゃうよ?
あとは巻きがうまくできないならフライ返し使ってもいいかも。』
はい、とたまごの切れ端を蛍の目の前に持っていけば、蛍はぱくりとたまごを食べる。
…私の指と一緒に。
『っ!蛍っ?』
「ゴチソーサマ。あと、作り方、近くで見れて参考になりました。」
にやりと笑いながらキッチンを出ていく蛍。
もう…
蛍の馬鹿。
蛍に食べられた指先がじんと火照っているようで思わず水で冷やした。
沸騰したお味噌汁に味噌を溶いていれば、ざわざわとリビングが騒がしくなる。
そろそろみんな起きたかな?
リビングの様子を見にいくため、コンロの火を止めると、私はキッチンを後にしたのだった。