第4章 新学期。
その後、離れたくないいいい!と叫ぶリエーフを教室に放置し、私はマサちゃんと一緒に校長室に向かいこの件について謝罪を行った。
校長は「また鯖の味噌煮定食作ってくれるんならいいよー。」と軽い口調。
そこまで叱責されることなく終わり、校長室から出ると、隣のマサちゃんが深いふかーいため息。
『まさ…嗣さんごめんね?お礼に今度何か作ってくるよ?』
「お前の飯も魅力的だけどさ…」
不自然に途切れた言葉。
不思議に思いマサちゃんを見れば私をじっと見つめる瞳。
『どうしたの?』
「……デート…しねえ?」
少し照れ臭そうに頭をかきながらマサちゃんは言う。
『…拒否権は?』
「ねえ…って言いたいところだけど流石にこれはお前の好きに…」
『デートじゃなくてお出かけなら…』
いろいろお世話になってるし、出かけるくらいは…なんて軽く考えた私。
急に引かれる体。
いつのまにか背中を壁に押し付けられる。
いわゆる壁ドンってやつですね。
いやね?
マサちゃんさ、意外に格好良いんだよ?
竹野内豊を若くしたみたいな感じなの。(ちなみにCV諏訪部順一)
素材はいいのに無精髭でジャージだからモテない。
そんなイケメンに壁ドン。
なに私モテ期ですかそうですか?
『ちょっ⁈マサちゃん⁈』
「黙れって…」
そんないい声で囁かないでー‼︎
「お前さ…ガキならまだしも28の大人が誘ってんだってーの。
少しは意識しろって…」
マサちゃんとの距離約10センチ。
ふわりとさりげなく香るバニラのような甘い香りとタバコの香り。
流石にこれはドキドキする!
『まさ…つぐさん…お願い…離れて…』
ぐいと胸を押すが全く離れてくれないマサちゃん。
「なあ…美優…」
するりとマサちゃんの指が頬を滑り顎を持ち上げる。
壁ドンに顎クイ!
どこの少女漫画だ!
『ごっ………
ごめんなさーーーい‼︎‼︎‼︎』
私は身長差を活かし、一気にしゃがむとそのまま廊下をダッシュした。
うん。逃げた。
なんだなんだなんだあの色気は⁈
マサちゃん何本気出しにきてんだ⁈
廊下の角を曲がり、ふと思い出したように私は顔を出し遠くのマサちゃんに声をかけた。
『ご飯くらいなら…いーよー?』
そんな私を見たマサちゃんはプッと吹き出し顔をくしゃりと歪ませ笑った。