第22章 今年も夏休みは終わらないっ!〜3日目、我が家!〜
帰りは繋ぐまいと決めていた手は、いとも簡単にリエーフに持っていかれた。
リエーフが話をしているのになぜか耳に入らない。
よくわからない感情が体の中をぐるぐる渦巻いて、どうにかなってしまいそう。
「美優さん?」
『…っ?リエーフどうしたの?』
「目の前エレベーター。」
リエーフの声にふ、と我に帰ると、私はいつの間にかマンションのエレベーターホールの前にいた。
まだがっちりと閉じられた扉に進もうとしていたらしい。
リエーフが不思議そうな顔で私をのぞいていた。
『あ…ごめん。』
謝ったタイミングで開くエレベーター。
くん、と手を引かれ中に乗り込んだ。
リエーフ
名前を呼ぼうと口を開く少し前。
エレベーターが閉まる直前。
リエーフがエレベーターの入り口に背中を向け、私を壁際に追い詰め、私の唇を奪った。
『りえっ…』
「黙って。」
早急なキス。
隙間から舌をねじ込まれ、絡ませられる。
ああ、私、これが欲しかったんだ。
先程感じたもやりとした感情。
認めたくないけれどそれは、嫉妬のようなもの。
手のかかる後輩、手のかかる彼氏。
そう思っていたはずなのに、
いつの間にかどんどん成長し、大人になって行くリエーフ。
どんどん私の知らない人になっていくようで、もやりとしていた。
「みゆ、さん…」
エレベーターが到着するまでの短い時間。
数十秒だけの早急なキス。
名前を呼ぶ声と、キスの合間にふわりと香るリエーフの香りに、
ああ、リエーフなんだ、とひどく安心した。
階についたことを知らせる音とともに離れる体と唇。
「ごめんなさい、行きましょうか。」
私の手首を掴み先に進むリエーフ。
少しだけ焦ったような顔にきゅんとして、背中にとんとぶつかる。
『もう少し…欲しい。』
顔を上げれば惚けた顔。
着ていたパーカーの裾を引き催促をすれば、壁に押し付けられる背中。
「俺も、もう少し。」
かがんで目線を合わせたリエーフに微笑むと、リエーフも微笑み返し再び唇が近づいた。