第22章 今年も夏休みは終わらないっ!〜3日目、我が家!〜
キッチンに移動しお皿とスプーンを準備していれば、名前を呼ばれそちらを振り向いた。
『どうしたの?』
「流石にお邪魔になるんで手伝いでも…と。」
そんな風に改めて言われたことに驚きと同時に溢れる笑み。
『別にいいよ、明日は新幹線なんだからゆっくり休んでて?
蛍?』
そう言った側から蛍はアイスの場所を聞く。
アイスの場所を伝えた私はアイスを掬うため、アイスクリームディッシャーを取り出すと蛍の方を向いた。
「なんで、この大きさのアイスが何個もあるんですか…」
冷凍庫を見た蛍があからさまに嫌な顔をする。
そう、うちの冷凍庫には現在業務用アイスが5種類。
バニラ、カフェオレ、キャラメル、抹茶、そしてチョコミントだ。
嫌な顔をしながらも全種類出した蛍にお礼を言うと、私はアイスがなぜこの量あるかという理由を蛍に教えた。
『箱アイス買ってもすぐになくなっちゃうでしょ?特に木兎。だから買っておいたの。』
5種のアイスを出した蛍はお皿を持っていくためのお盆を取り出す。
受け取ろうと手を伸ばすと、蛍はその手を引き私を胸元に引き入れた。
「隙、ありすぎですよ?美優さん。」
ふわり、と香る柔軟剤と制汗剤の香り。
慌てて逃げ出そうとするけれど、ぐるりと背中に回った腕は解けない。
『やっ…蛍っ…』
「僕はこのままキスしたっていいんですが…」
顎をくいと上げられ思わず強く瞳を閉じた時、リビングの方からばたばたと走る音。
「ツッキィィィィィイィィイィイ!!!!」
キッチンの前で急ブレーキ。
ガバリと顔を上げたのはシルバー。
「美優さんになにやってるの!」
嫉妬全開の顔でキッチンに入り、蛍と私の間をこじ開ける。
「美優さん隙ありすぎ、って教えてあげてるの。」
割り込まれたすき間をものともせず、蛍は私の頬にちゅっと口付ける。
あ、と思った時にはもう遅くて、蛍のニヤリとした顔と、リエーフの表情がなくなる様か見える。
逃げ出そうとすれば無機質な声で呼ばれる名前。
「美優さん、明日楽しみにしててね?」
にこりと笑う顔がやけに恐ろしい。
…今のは私のせいではない。
そう思いながら、私は隣でにやりと笑う蛍に肘打ちをした。