第21章 今年も夏休みは終わらないっ! 〜旅行3日目〜
「…ゆ……みゆっ!」
重い瞼を開けば目の前には木兎。
びっくりして目を見開けば、木兎がニンマリと笑う。
「ほら!サービスエリア着いたぜー!」
くいっと私の腕を引いた木兎。
周りを見れば木兎1人。
あれ?確か木兎は別の車だったはず…
そんなことをぼやりと考えていれば、木兎が説明してくれる。
「みんな便所!あと黒尾たちが、行きてーって言ってた店の列に並んでる。」
俺は美優起こす係!
そう言った木兎は私が車から降りたことを確認すると、クロから借りたらしい車のキーで車を閉める。
「ほら、行こうぜ‼︎」
差し出された手。
無意識に自分の手を乗せると、木兎のあったかい手がきゅっと私の手を包む。
…と、木兎はそのままばびゅんと効果音が鳴るのではないかと思うくらいのスピードでサービスエリアに向かい始めた。
起きたばかりで頭が働いていないのとヒールのせいで足がもつれ、木兎の背中にダイブ。
ダイブしてきた私の顔をびっくりしながら見る木兎にそれを説明すると、ああ、そういうことか、と軽い返事。
「じゃあさ、こうすればいいんじゃね?」
何が?
そう思う間も無く私の体は宙に舞った。
俗にいうお姫様抱っこをされたのだ。
『ちょっ!ぼくとっ!』
「腹減ったからいっくぞー!」
私を抱えても走るスピードは落ちない。
怖くて首にしがみつけば準備OKとでもおもったのだろうかさらにスピードを上げた。
『ゃっ!ぼくっ!』
「喋ると舌噛むぞー!」
たたたたんっ!
道路を横断し、階段を登りトイレの前。
そこで止まった木兎。
着いたぜーと軽く言い放ち、木兎は私の体をそっと下ろす。
ぽんっと地面に降ろされた足は突然のことに言うことを聞いてくれず、かくり、と崩れ落ちる。
「うわっ!みゆっ⁈」
転ぶ!
そう思った時に後ろから木兎の手が伸び脇の下を掴む。
木兎はそのまま私を近くにあったベンチに移動させ、座らせてくれた。
『木兎、ジェットコースターみたい…腰抜けた…』
「わりー…」
悪いことをした、と自覚してしゅんとなる木兎。
ベンチに座るわたしの目の前に体育座りでしょぼくれる。
さて、しょぼくれ木兎を元に戻さなくちゃなぁ…
どうしたもんか…