第4章 新学期。
2年のクラスが並ぶ廊下。
ざわざわと騒ぐ生徒達の中、私はマサちゃんの後ろを歩く。
並ぶ教室の扉の前でマサちゃんは止まり入り口を開けた。
「おい、灰羽。椎名が弁当届けに来たぞ。」
マサちゃんがそう言う横から顔を出すと、教卓とは正反対。
1番後ろの席にリエーフは座って友達と話をしていた。
「え?山岡せんせー?あれ?美優さん!」
私たちに気づいたリエーフは友達に断りを入れてわたしの方に駆け寄ってくる。
「どうしたんすか?」
『お弁当。忘れてったでしょ?』
お弁当を差し出すと、リエーフは苦笑い。
「途中で気づいたんですが朝練間に合わなさそうだったんで…」
『明日からは届けないからね?』
なんて話をしていたら後ろからリエーフに声をかける人。
「灰羽くん良いところに。今日放課後の部活は無しだって。明日は朝練無しで放課後は部活あり。伝えたからね?」
「おー!芝山了解!」
『あ、芝山だ!』
声をかけると私を見て芝山は驚いた顔。
「あれ?椎名さん。どうしたんですか?」
『リエーフがお弁当忘れたから届けに来たの。』
「…?”忘れた”から”届けに”きたんですか?」
『そうだよ?』
そう言えば芝山は不思議そうに私を見る。
「それってなんか一緒に暮らしてるみたいな言い方ですね。」
あ。
これってやばい…?
慌ててリエーフの方を向けば、リエーフは満面の笑みで言った。言ってしまったんだ。
「うん。今、俺、美優さん家に住んでる。」
言ってはいけない一言を。