第4章 新学期。
遠くからチャイムの鳴る音が聞こえ、私はふとあることを思い出した。
『あ、マサちゃん。今って休憩時間でしょ。2年生の教室行っても大丈夫?』
「灰羽、早速何か忘れ物か?」
察しがいい。私は鞄とは別の小さなトートバッグをマサちゃんに見せる。
『リエーフ、お弁当忘れて学校行っちゃったから学校来たついでに渡しに行こうかなって。』
家の距離的に登校時間が早くなることをすっかり忘れていたリエーフ。
朝、ゆっくりしすぎて私がそれを伝えたらどたばたと出かけて行ったのだ。
そのためお弁当を渡し忘れてしまったってわけ。
「じゃあ俺、ついていくわ。面倒な事になりそうだしな。」
『やった。リエーフのクラス知らないんだよね。』
ぎしり。
椅子から立ち上がったマサちゃんは職員室を出る。
その後を追いかけ私も職員室から出ると職員室の前で待っていたマサちゃんにぶつかる。
『みゃっ!マサちゃんごめ「灰羽の教室に連れて行くのには1つ条件がある。」
ぶつかった私の体を支えるふりして腕の中に抱いたマサちゃんは耳に吹き込むように条件を呟いた。
「名前、流石にちゃん付けじゃ色気もクソもねえからな。」
『異論は?』
「認めねえ。」
『言わなきゃ?』
「離さねえ。」
『正嗣…さん』
そう呼ぶとマサちゃん…正嗣さんはにかりと笑って頭を撫でる。
「うん。やっぱりいいな、美優。」
ほら、行くぞと正嗣さんが先を歩き出すから私は慌てて後を追いかけた。