第21章 今年も夏休みは終わらないっ! 〜旅行3日目〜
「今度は同じ部屋で一緒に…しましょうね?」
ごきゅりっ
そこそこ大きく齧ったデニッシュを噛み砕く前に飲み込んだおかげで、ものすごい音が喉から鳴った。
詰まりかけたデニッシュが苦しくて、必死にアイスティーで流し込む。
やっとの事で飲み込み涙の溜まった目で莉奈ちゃんを見、問う。
『一緒…⁈莉奈ちゃん何言って…』
「何って…一緒にしません?えっち。」
一緒?
いっしょ?
…いっしょ……
莉奈ちゃんから返ってきた答え。
わかっていても理解することを脳が拒んでいて目をぱちくりさせていれば、莉奈ちゃんが笑う。
「だって、昨日気持ちよかったから…
それに美優さんだったら私キスできそうだし♡」
『りなちゃ⁈何言ってっ‼︎」
ガールズトークに花を咲かせていて私達はすっかり忘れていた…
みんなを待たせていたことに。
「面白ぇ話してんじゃねえか。
なあ、莉奈、美優。」
がしり、と鷲掴まれた頭。
この声は…と振り向く前にぐぐぐと頭を掴まれる。
「『いたたたたたたたっ!』」
10秒ほどがしりと掴まれ、痛む頭。
離されてほっとしたのもつかの間。
お前らなぁ…とため息をつかれた。
「いつまでたってもこねーと思ったら…何話してんだよ、莉奈。」
「…ごめんなさい……」
困ったような顔をする莉奈ちゃんに意地悪な顔で笑うクロは、やはりさっきの莉奈ちゃんに似ていた。
それを見ていれば、とんっと両肩に触れる手。
「でもいいっすね、黒尾さん。乗り気じゃないの美優さんだけみたいですよ?」
ばっと後ろを振り返ればリエーフ。
『りえっ!やっ!嘘っ‼︎』
いつから後ろにいたのだろう。
リエーフと目があった瞬間、ぎらり、と2つの翠が光る。
「今度は4人でしましょうね?」
こそり呟かれた言葉は、私の鼓膜を揺らした。