第4章 新学期。
4月。
出会いの季節。
のはずなのに、私は卒業したはずの母校、音駒高校の職員室にいた。
「お前な…卒業しても面倒ごと持ってくんなって…」
『マサちゃんごめんね?』
はぁとため息をついたのは私の前担任、山岡正嗣(やまおかまさつぐ)。
今年29歳になる独身。
高校時代、1番お世話になった恩師だ。
…まあ、卒業前に想いを告げられているから、ただの恩師じゃないんだけどね。
なぜここにいるかっていうと、リエーフの両親が学校側に出張のことを伝えたらしい。
そして出張中のリエーフの居場所のことも。
それで学校側から私に事実確認…とのことで連絡が入ったってわけ。
まあ、今日は学校来なきゃならなかったから丁度よかったんだけどね。
「灰羽の両親からも許可は出てるし、まあ大丈夫だろうって話だ。ちなみに新任の先生方には俺から説明はしておいた。」
『さすがマサちゃん。』
「さすがじゃねえよ…どれだけ俺に余計な仕事させるんだ…」
『でも、私に会えて嬉しいでしょ?』
そう、冗談めかして言ってみた。
するとマサちゃんはじっと私の瞳を見つめ、ふ、と小さく笑う。
「まあな。」
マサちゃんの微笑みにぶわわと自分の顔が赤くなるのがわかる。
これが大人の余裕ってやつか…
「お、少しは意識してくれてんのか?」
私の表情を見ながらマサちゃんはさらに笑い私の頭を撫でる。
『ちがう…もん…』
そう呟き、私は赤い顔を隠すために俯いた。