第19章 今年も夏休みは終わらないっ!〜2日目、海!海!海!〜
「じゃあ行きましょうか?」
リエーフは私に声をかけると私の手を引きながら海に伸びる遊歩道の方へと歩き出した。
リエーフは私の歩幅に合わせながらゆっくりと歩く。
目の前には一面の海。
「綺麗ですね。」
ぽそり、リエーフが呟く。
暮れゆく日が水面を橙に染めているのが圧巻で、つい、リエーフの腕を掴んでいた手に力を入れてしまった。
『綺麗…』
やっと出た言葉は一言で、それも拙い言葉。
それでもリエーフには届いたようで小さく笑う声がした。
「砂浜の方に行って座りませんか?」
リエーフの問いかけにこくりと頷くとリエーフは私の手を取り浜辺への階段を下る。
その途中で止まると、リエーフは階段に腰掛けぽんぽんと自分の腿を叩く。
一瞬周りの目が気になったが、周りもカップルだらけ。
諦めて座れば、背中からぎゅっと手が回ってきた。
「みーゆさん。」
『なに?リエーフ。』
「旅行、楽しいですね。」
そう、私の肩に顎を乗せて話すリエーフ。
潮風で頬にリエーフの髪の毛が当たってくすぐったい。
毎日家で顔を合わせているはずなのに、嫌いだと思うことがない。
毎日が愛おしくて、一緒に過ごせるのが嬉しくて、忘れてしまいそうになるけれど一緒に暮らすのは1年、もしくは2年限定なんだとふと思い出す。
良彰さんとレイラさん…リエーフの両親が帰ってきたら今みたいに毎日リエーフと一緒ではいられなくなる。
特に来年は、私は専門学校を卒業するための試験やら、就職のための面接やらで忙しくなる。
リエーフも来年は高校3年生。受験に大会に忙しくなる。
リエーフが私の家を出たら今みたいに頻繁に会ってはいられない。
リエーフはそのことについてどう考えているんだろう。
思い切って私は、そのことについて聞いてみることにした。