第18章 旅行の夜はなぜ長い?〜旅行1日目〜
なんだろう。
ざわざわと声がする。
うっすらと目を開けるけれど、眠気に負けてまた目を閉じた。
まだアラーム鳴ってないから大丈夫…
そう思っていた時、部屋のドアが大きな音を立てて開いた。
「美優!リエーフ!」
…え?クロ…?
「やっと見つけた。起きろって今何時だと思ってんだ。」
何時って…?
まだ完全に冷めてない頭でスマホの待ち受けを見れば8時を超えていた。
アラームを確認すれば設定されていたのはAMでなくPM表記の6時。
『っ!ごめん!朝ごはん急いで準備するっ!』
慌てて台所へ走れば、私達以外はみんな起きていたようで、キッチンには蛍と莉奈ちゃんが。
男子部屋には布団をたたむ木兎と赤葦。
『ごめんっ!アラーム間違えてた!今からご飯作る!』
そう言って手を洗い始めればキッチンで待機していた蛍と莉奈ちゃんが私に声をかけて来た。
「何かやることは?」
「お手伝いしますよ?」
ああ。泣きそう。
寝坊したの私なのに…
『ありがとう!じゃあ説明するね?』
とりあえず前日下拵えをしていたものを出して、どの調理法で行けば最短で食事ができるかを考えた。
『…まず、莉奈ちゃん。じゃがいも5個洗ってラップに包んで電子レンジで7分くらいチンお願い!』
「わかりました!」
『蛍は卵4個とミックスベジタブル半分くらいを茹でちゃって?卵の殻しっかり洗ってね?」
「はーい。」
それぞれ言った仕事をやってもらいながら、私は前日に臭みを取るためにお酒につけて置いた鮭を洗い、水気を取る。
人数分の鮭に塩胡椒を振り小麦粉を付けると、フライパンに油とバターを入れて、最初は弱火、裏返して中火。ラストに焼き目がつくように強火で焼き上げる。
それをお皿に盛り付けていると電子レンジが小気味よい音を奏でる。
レンジの中のじゃがいもに爪楊枝を刺せば、火の通りがもう少しのようなので裏返して2分追加してもらった。
「卵、10分茹で上がりましたよ。」
『じゃあざるにあけて卵の殻向いて?
がっつり冷やしてからの方が殻は剥きやすいと思う!』
その間に私は玉ねぎ1つときゅうり2本のみじん切りを始める。
無心になって切っていればレンジの音。
包丁を止めて指示をしようとした時、誰かが私の背中を優しくぽんと叩いた。