第3章 無理は禁物。
そして後日、すっかり回復した私は忘れそうになっていたクロとのお出かけに行くことになった。
朝、部活に行くリエーフにものすごく念押しをされる。
「熱がないからって無理はしないでくださいね?疲れたらすぐ休むこと!後は黒尾さんだからって油断しないこと!」
『わかってるよ?今日もご飯作って待ってる。』
あまり信用していないリエーフをいってらっしゃいと送り出すと、私はお出かけの準備を始めた。
今日はネイビーの小花柄ガウチョに白のロゴTシャツ、淡い黄色のカーディガン。
ストラップパンプスに白レースの靴下を合わせ、カバンは皮のリュック。
髪の毛をまとめているとスマホの着信がなる。
すぐに出ればクロが家の前に着いたとのこと。
ささっと髪を結い、戸締りをして飛び出せばマンションの前には車とクロ。
『お待たせ。待った?』
「いーや?別に?」
私は助手席に乗り込みシートベルトを締めた。
『今日はどこ行くの?』
「行ったらわかる。」
そう言ってクロはエンジンをかける。
カーステレオから流れてきたのは、また桜の名曲。
前回もクロの車で聴いたな…
なんて思いながら口ずさめば、クロもノッてくる。
2人で大熱唱しながらナビ通り進めばたどり着いたのは県境の河川敷。
満開の桜並木がずっと先まで続いている。
『綺麗…』
「だろ?」
『何でここに?』
そういうと、クロは笑いながら話をしてくれた。
「いや、さ、車も出せるようになったからあいつら花見にでもつれてこようかな…なんて思ってな。」
そうか、音駒バレー部のお花見の下見か。
クロらしい。
そう思っていたらクロがいや…と言い淀む。
そんなクロを見ると、じっと私を見つめている。
「そんなの口実で、ただ美優と花見したかっただけ…なんだけどさ。」
真顔でそんなこと言わないで…
『…ばかクロ。』
恥ずかしさを隠すように顔をそらしながら呟く。
『ありがと…ね?』
小さな声で呟くと、クロは、おう、と返事をして笑った。