第17章 今年も夏休みは終わらないっ!〜今年も大集合!1日目編〜
「美優さん、茶碗蒸し。口開けて?」
考えごとをしていた時に急に蛍に話しかけられたものだから、私は何も考えずに蛍の方を向き口を開けてしまった。
にやり
勝ち誇ったような笑みを浮かべ私の口に茶碗蒸しの乗ったスプーンを押し込む蛍。
あ。
やっちゃった。
周りを見ればアジフライにかじりついたまま固まる木兎に、ごきゅりと音を鳴らしながら天丼のかぼちゃ…かな?を飲み込む赤葦。
隣の莉奈ちゃんの目元を両手で隠すクロに、隠される前に見てしまい顔が真っ赤な莉奈ちゃん。
そして、恐る恐る後ろを向けばにこやかに笑うリエーフ。
「美優…さん?」
『すいませんでした。ぼーっとしてました。』
「ツッキーもさ、何してるの?」
「呼んでも返事しないからつい。いいじゃない、食べさせるくらい。」
「ツッキー?」
「…はいはい。」
蛍は降参とばかりにため息をつく。
それを見たリエーフは、私の方を向く。
「美優さんは油断しすぎ。次から気をつけてください。」
『はーい…』
「…ってことで、はい!」
そう言ってリエーフが差し出してきたのはリエーフの定食に付いてきた茶碗蒸し。
スプーンですくわれた茶碗蒸しが口元に近づく。
私が観念してスプーンを口に入れればご満悦な顔をして残りの茶碗蒸しを食べ始めた。
蛍もリエーフも心臓に悪いからやめて…
この空気、どうしたらいいのよ…
そう感じていた時に新たな事件発生。
「うぎゃっ!刺身落としたっ!」
声の方を見ればTシャツの襟元に醤油をつけたばっかりのお刺身を乗せた木兎。
隣の赤葦がお刺身を瞬間的に取り除き木兎の口の中へ入れるという早業を見せてくれたがやっぱり醤油のシミが…
「これ、気に入ってたのに…」
あ、これ、しょぼくれる。
赤葦がこちらに視線を投げかけたので、私は蛍に場所を開けてもらい木兎の隣に移動した。