第3章 無理は禁物。
ふと目を開けると見慣れない天井。
どこだろ…ここ…
体を起こすと事務室…医務室?
斜め前で事務仕事をしていたおばさまが私が体を起こした音で振り向いた。
「お姉ちゃん大丈夫?」
『私…』
ぎぢり、と事務椅子を鳴らしおばさまが立ち上がる。
「ここ、ショッピングモールの休憩室。まだ寝ておきなさい。熱あるんだから。」
うそ…熱…
あったんだ…
「一緒にいたおっきいお兄ちゃんが買い物してくるからって言ってたから帰ってくるまで横になってなさいよ。」
『あ…はい…』
返事をすると私は起こした体をまた倒し横になる。
やっちゃったなぁ…
いつのまにか疲れてたんだなぁ…
”美優は動けなくなってから無理してたんだなって気付くから…”
去年、文化祭の時に親友の千景(ちかげ)に言われた言葉を思い出す。
リエーフにも散々大丈夫かって聞かれてたのに…
小さくはぁとため息をすればくすくすと笑い声が聞こえる。
「あぁ、ごめんね?おっきいお兄ちゃんがお姉ちゃんをここに連れてきたとき、ものすごく慌ててたから…本当、大事にされてるなぁってね。」
だったら余計に申し訳ない。
心配…させちゃったなぁ…
そう考えていれば急に開く扉。
「すいませーん!戻りましたー!」
リエーフが部屋のドアを開け部屋の中に入ってくる。
簡易ベッドの横にある椅子に腰掛けたリエーフと目が合った。
「あ、起きたんですね?美優さん。」
そういうとリエーフはベッドの隣の椅子に座り私のおでこを触る。
「やっぱりまだ熱あるっぽいですね。」
『ごめんね?リエーフ…』
「なんとなーく無理してるなとは思ってたんですが…家帰ってゆっくり休みましょう?」
にこり笑ったリエーフはそう言うと後ろのおばさまにコーヒー専門店のコーヒーを差し出す。
「おねーさん。お世話になったからこれ、飲んで?」
「あら。別にいいのに。」
おばさまはありがとうねーなんて言いながらコーヒーを受け取った。
「また改めてお礼にきますねー!」
そう言うとリエーフは私に向き合う。
「さて、立てますか?」
私は上半身を起こすとバレエシューズに足を通す。
立ち上がり荷物、と思ったら荷物は全部リエーフが持ってくれている。
「じゃあ行きますよ?」
そう言うとリエーフは自分の腕に私の手を絡めさせ、休憩室を後にしたのだった。