第10章 獅子のいない1週間。ナイショのデート編
『ごめん…なさい。』
唇が触れる直前、私はマサちゃんの体を両手で押していた。
マサちゃんは好き。
でも、それ以上に私はリエーフが好き。
これを受け入れてしまったらきっと私、元に戻れなくなる。
感情が追いつかない。
嬉しいのとドキドキと苦しいのと辛いのが混ざって、いつのまにかぽろぽろと雫が落ちた。
「美優…」
『マサちゃんの事は好きだよ?
でも私、それ以上にリエーフが好きで…
だから、ごめんなさい。』
高校生の時の、自分でも気付かなかった淡い恋心が
今になって自分を苦しめる。
「分かってる。」
マサちゃんはぽつりと呟くと、正面から抱きしめ、私を落ち着かせるようにと背中をさする。
ちょうど、心臓の高さにある私の耳は、マサちゃんの鼓動をダイレクトに聞き取った。
明らかに緊張した、早い鼓動。
私と同じくらい、速い鼓動。
ごめんなさい、マサちゃん。