【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】
第6章 それぞれの過去
「俺は、このふたりが大好きだから、
人間が大嫌いなんです」
そう言った紅夜の目は
どんな夜よりも深い闇を映す。
「天保の大飢饉はご存知ですか?」
またも全員がこくりと頷く。
それを確認した紅夜がそっと目を閉じると
周りの景色がガラリと変わる。
木々はなぎ倒され、土砂が流れてきている。
「彼らは非人で、自給自足生活ですからお金は持ってない。
むしろお金を持っていたとして、
町に降りて助けを求めれば捕まってしまう。」
だから、と続ける紅夜の顔は悲痛に歪む。
「彼らは必死にこの山で生活を繋いだのです。
警戒など全くしていない俺たちを食べることだって出来たはずなのにそれもせずに。」
目の前の老夫婦は思わず手を差し伸べたくなるほど弱りきっていた。
それでも毎日交代で山に出かけ、どうにか食べられるものを探す。
徐々に2人は弱っていき、女性はついに起き上がることもままならなくなった。
「その日、食料を探しにたまたま山を少し下ったんです。」
その言葉と同時に男性が山を降りていく。
「そこで視察に来ていた政府の人間と鉢合わせてしまったのです。」