【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】
第6章 それぞれの過去
「そこにいるのは誰だ!!何をしている!」
怒鳴り声と共に、足音が近づいてくる。
男性はビクッと肩を揺らし、声のした反対方向へと向かうが
弱っている上に焦った体はいうことを聞かない。
土砂でむき出しになっていた木の根に足を取られ、
つまづいてしまった。
そのまま政府の人間に見つかり、非人であることがバレてしまったようだ。
「この時の俺は妖狐に片足を突っ込んだだけのただの狐で・・・何も・・・」
語尾に向かって小さくなる声。
震えるその声はついに止まってしまった。
幻の中の紅夜も、
政府の人間に向かっていくものの
持っていた武器で返り討ちに合ってしまっている。
血まみれで、手足を引きずり、それでもなお向かっていく。
・・・目を逸らしてしまいたい。
幻がぐらりと歪む。
紅夜の感情の乱れと妖力の限界だ。
ぐるりとあたりを見渡すが、常世の姿は見えない。
紅夜の頭をそっと胸にかかえ、妖力を移す。
「つらかったね。
今までずっと1人で抱えさせてごめんなさい。
もう1人じゃない。
もう少しだけ頑張って。」