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【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】

第5章 数千年の月日



足跡一つない雪の上に、
一つ目の足跡を残すような。


まるでこの世界の全ては私の意志で動いていくような錯覚。

私が望むように。
変化していく世界。


嫌いなものは何一つ消え失せてしまって。

好きなものしか残らない。



そんな世界で
もし私が、常夜を


『嫌いなもの』と

認識したなら?



「なぁ、彼岸」




その思考にストップをかけるのは常夜の声だ。

「ん?」


急速に現実に引っ張り戻されて
まだボーっとしている頭で返す。



「お前は何をそんなに怖がっているんだ」



「・・・え?」


それはあまりにも唐突な問い。


引き戻されたばかりの頭は
その質問に即座に答えられるほど、回転してはいなかった。


じわり、じわりと脳に、心にその問いは染み込んでいく。


「こわ・・・が・・・る・・・?」

私が?

怖がっている?


「お前はもう独りではない。
失わない、守る力だってある。
何をそんなに恐れているんだ。」


独り・・・・

恐れる・・・?


恐れてなどいない

・・・いない?本当に?


紫雨の知る、常夜の知る、過去。

それを知ろうとしてこなかったのはなぜ?




静まり返っていたはずの湖に
たった一滴、滴り落ちた。


それは波紋を起こして
大きく大きく、広がっていった。
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