【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】
第3章 嵐の前の静けさ
【彼岸】
「すっげー!!」
ここ1年で別人になってしまったのではないのかと
たまに心配になるほど落ち着いたノギが
隣ではしゃいでいるのを見て
やはり年相応なのだな、と微笑ましく思う。
屋敷に来た時、確か20歳だと言っていたはずだから
もう21歳になったのだろうか。
「・・・あれ?
そう言えばノギ、誕生日いつなの?」
・・・1年一緒に過ごしてきて誕生日すら知らないとは。
そうやって考えれば、名前以外知らないかもしれない。
そもそも少なくても200年生きている私たちは
自分の誕生日なんて覚えてない。
だから誕生日会みたいなことはしないし
そんな話にもならないのだ。
「んぇ??」
綿飴を片手に持ち
リンゴ飴を咥えながら振り返ったノギ。
その顔があまりにも可愛らしくてクスリと笑ってしまう。
「あ、え、すいません、なんて言いました??」
咥えていたリンゴ飴を口から離して
今度は申し訳なさそうに眉を下げる。
「ん、そんなに大事なことじゃないんだけどさー
ノギ、誕生日いつかなって」
今まで話していた世間話の延長線上。
何気なく聞いたその言葉に一瞬。
・・・ほんの一瞬だけひどく歪んだように見えた。