【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】
第2章 お屋敷での共同生活
ふいに呼ばれた「恩人」と言う言葉に
ゆるりとした温もりを感じる。
これでも人間に信仰された神だ。
妖力を使わずともなんとなくの気持ちぐらいなら分かる。
きっと、疑っても怖がってもいないのだろう。
「私は空狐。名を彼岸と言う。
この山にある稲荷大社の狐だよ。」
言葉と同時に耳と尾を出す。
目の前の男が息をのむのが分かった。
「・・・綺麗だ・・・」
ボソっと呟かれたそれに
胸が温かくなる。
思ったことがすぐ言葉になるタイプらしい。
「さぁ、私たちのことは大体分かったろう?
次はそちらの番だよ」
ふ、とほほ笑みかければ顔が赤く染まる。
・・・分かりやすい奴だ。
「俺は佐波世喜。
昨日友達と山登り、と言ったけど・・・
悪い、あれは嘘。
じつはさ、自殺、するつもりだったんだ。」