第1章 ギャンブル
「バカ言わないで、それでなくても夏音は…」
「…分かった」
紗英の言葉を遮ってジヨンに微笑んだ。
「夏音!?」
「一人も二人も同じ。でしょ?」
心配そうな紗英が瞳でダメと訴えてくるけど心配ないからと笑って返した。
「日本語?日本人?それもバレていいの?」
そうよ。分るようにわざと日本語にしたの。バレたからもう隠すものは少なくしたいから。
「ここがバレて日本語で歌ってる私を見たならもう隠してもムダでしょ?」
「意外に鼻がきくね。本名は?」
「夏音」
「夏音ね、了解、さ、行こうか?」
ジヨンが私の手をとって部屋はと聞いてくる。
「私の練習の邪魔しないで。社長は練習終わるの待っててくれたわ。あなたと私を同じにしないで。私はお天道様が見える時に練習できる身分じゃないの。闇に隠れて生きる妖怪人間よ。」
私は今まさにそんな状態なのよ。誰にも正体は知られてはいけない。
でも、ジヨンなら大丈夫ね。
日本の芸能界には興味はなかっただろうし、私たちのバンド、ピーコックなんて聞いたこともないだろうから。
「妖怪人間?」
あぁ、面倒そうな顔、やっぱり若いわね。社長とは態度が違う。社長は私に無関心だもの。こんな話をしてもそうかで終わり、でもジヨンは面倒そうだけど、聞いてきた。面倒なら聞かなきゃいいのに。奴隷の扱いに慣れてないわ。
「妖怪人間も知らないでよく夏音を口説こうとしたわね。勉強不足じゃない?日本のアニメよ。ドラマにもなった。」
紗英が馬鹿にしたようにからかいだす。
紗英ちゃんも子供だと思ったのかも、すぐに態度が顔に出るし。クォン・ジヨンの魅力はそれなのかな?喜怒哀楽を素直に出す。でもテレビでは抑えてるほうかしら?ぶっちょう面が多いし。
「サエちゃん、あんたも痛い目あいたいの?」
喧嘩の押し売りに素直なのも分りやすい性格なのかも。あのぶっちょう面で分らなかったわ。キレ者とは思ってたけど…可愛い性格なのかも。
私は紗英とジヨンのやり取りを見てふいてしまった。