第1章 ギャンブル
言われた住所に行き、バーに入ろうとしたらバーの右側路地に何かが蠢いた。猫かと目を凝らしたら夏音だった。もう一人誰かがいて見たことある人物だった。社長だ。夏音と社長は舌を絡め合ってキスをしていた。
社長が何かを呟いてこっちに歩いてこようとしていた。俺はとっさにバーに入って隠れる。
そういうことか…何だかショックで苛立った。
それがなんに対する感情かなんて分からなかった。ただ意味なくムカついた。
裏切られたなんていうには俺はまだ舞台にも上がっていない役だ。苛立っても誰にもあたることなんかできない役…だから意味なく苛立っていることにするんだ。答えは分かっているけど…でもそれはまだ認めてしまうには幼い想いだ。俺のことだ。すぐ忘れてしまうさ…そういう男できただろ?
そう思っていたのに舞台で歌う夏音を見てしまったら思いもよらない行動に出ていた。
「ホントはこれが本業?」
舞台が終わり、カウンターに引き上げてきた夏音にかけていたサングラスをずらしながら話しかけた。
「…あ、あなた!?クォン・」
「そう、クォン・ジヨン」
「嘘でしょ?」
カウンターの奥から夏音とは違う声がしてそっちを見つめる。
「あぁ、あんたもいたんだ。サエちゃん?」
最年長の紗英ちゃんだ。
「これ、他のメンバーに知られたくなかったら…夏音、俺の奴隷になって?社長と同じ身分の。いいでしょ?」
二人は顔を見合わせて慌てていた。