第1章 ギャンブル
「椎橋紗英よ。のぞむところよ。やんならやんなさい。」
紗英ちゃんは本気な顔だった。もしかして、身代わり考えてる?
「趣味じゃない。妖怪人間ってどうして?」
ジヨンも紗英の本気を感じ取ってフイッと横を向いて目線をそらした。
あんなこと言ってても羞恥心はあるのね。本当はいけないことって分ってる顔だ。
だったらなぜ、私に奴隷になれなんて言ったのかな?
「はやく、人間になりたいからよ。」
私は、冗談でも言うように微笑して自虐的な言葉で返した。
「紗英ヌナ、そういう話なの?」
「ヌナ!?あんたにそう言われる筋合いないわよ?そうよ。人間になろうと願う半妖怪の話よ。」
「へぇ、俺が人間にさせようか?夏音?」
自信満々な妖艶な笑顔に引き込まれた。こういうときは策士な顔になるのね。侮れない人だわ。
「無理よ。顔バレができないから妖怪人間やってるのよ。」
そんなに簡単なものなら、社長が待てなんて言わない。奴隷にしようなんて思わない。
思ってる以上にあの俳優は知名度があるってことよ。
「どんな理由にしろ、俺が人間にさせるよ。」
「ジヨン、そんな簡単な問題じゃないのよ…」
紗英が私の心を読み取るように代わりに言ってくれる。
「紗英ヌナが反対してもやるよ。」
それでもジヨンは自信があるようだ。何年も研修生ですごしてきただけあって根性が据わってる。
「やめて、本当に妖怪のままになるわ。」
でも、そんなことされれば、私は永遠に世には出れない。
「分かった。時期がくれば、やる。それならいい?こんな妖怪、埋もれたままにはできない。だから、全部、話して。」
私を認めてくれるの?あのクォン・ジヨンが?
真剣なジヨンの瞳に吸い込まれるように私はすべてを話した。
「ふぅん、そんなにその男、有名?」
「大河も主役するほどよ。」
紗英が代わりに答える。
「俺、知らない…」
「君は興味ないでしょ?」
私は、日本のドラマには興味なさそうだと思って笑う。
そんな感じだもんね。音楽で頭がいっぱい。私もそうだから。