第1章 ギャンブル
「ピーコック?」
おまけに聞きなれない名前までヒョンの口から飛び出す。
「ここの店名兼私がマネージャーをするバンドの名前よ。」
ヌナがヒョンの代わりに口を出してきた。
この人は俺をいじめるのが趣味なんだ。
俺が夏音を苦しめてる分、この人はかわりに俺を痛めつける。
「……」
「知らなくてショック?」
ほら、地雷踏んできた。
ヌナは楽しそうに笑う。
「紗英ヌナは絶対Sだ。」
「そうよ。だから観念してショックて言いなさい。慰めちゃる。」
そう言ってもヌナは最後の止めは刺さない。ふざけて何にもなかったことのようにさらっっと流してくれる。
「結構です。」
その優しさが分かるから俺にとってはヌナだ。
「お、元に戻った。」
ヌナはつまらなさそうに言うけど、嬉しそうにも見えるから、やっぱり憎めない人だ。
「ジヨン、俺にもバレたってことはもうメンバーにも知らせていいと思わない?」
やっと、ヒョンの言いたいことが分かった。これを機に悪しきは取っ払いたいそういうことだな。
「もう俺だけのなかにおさめておけないって意味ならそうだと思う。ヒョンの好きにしていい。俺は帰る。」
でも俺はその悪しきのなかでなきゃ生きられない。だから、見届けるなんてできない。
俺の終わりだから。
「待て、見てけ。そしたらお前の呪縛も解ける。俺と同じ舞台に立てよ。そうしなきゃ、フェアじゃない。」
ひとり、綺麗なとこにいたやつだから言える言葉だ。
汚いところにいた俺に舞台に上がれなんて、よく言えるな。
「夏音がそんなことこだわる女だと思う?お前の好きな夏音はそんなことだけで男を判断しない。だろ?だから、いつもみたく、どっしり構えてろ。リーダーらしく。ふてぶてしく。」
俺の思っていることを見破られてしまった。
この時点で俺、負けてんじゃん。
こうまで言われたら帰れないよ。
帰ろうものならプライドに傷がつく。
帰るなんて男の恥だ。
ヒョンの頼みだからヒョンの言うようにリーダーらしく、振舞って内心のビクビクなんかおくびにもださないでやるよ。