第1章 ギャンブル
「そう?宇多田ヒカルも好きなのよ。綺麗な曲でしょ?」
私は夏音が話すような口調で何でもないように返事をした。
何か嗅ぎ付けたわね。そうこなくっちゃ、面白くないわ。
「お前が好きな曲調じゃない。」
なかなかやるわね。鋭いわ。
「お前のガラじゃない。それに声がぜんぜん違う…あんた…誰?」
声?声は瓜二つだわ。見分けられない。カマかけてるのかしら?
声で分りっこない。
「誰って、夏音だけど?」
分りっこないと思ってもジヨンの見透かすような視線に焦る。
口調を真似れば、見分けられない。
まだ、バレたわけじゃないわ。
自分に言い聞かせて焦りを拭う。
「…違う。声が違う。あんた、夏蓮?」
ジヨンが見据えるように私を見て問いかけてくる。
まだ、カマをかけて揺さぶるつもりだわ。
「何、言ってるの?夏蓮は熱出して部屋で寝てるわ。疑うなら、一緒に見に行く?」
「やっぱり、夏蓮だ。夏音はそんな駆け引きしない。」
ジヨンは馬鹿にするなといじけた顔で私を睨んできた。
「……」
あんたに夏音の何が分かるのよ。
「いい加減、夏音の居場所教えて。遊びに付き合ってる暇が惜しい。」
ジヨンは確信してしまっているようでもう何を言っても私は夏蓮と断定したようにはっきり言われてしまった。
「あんたに夏音の何が分かるのよ。」
見破られただけじゃなく、まるで夏音を私より分かってるみたいな言い方をされて腹がたった。
「あぁ、やっぱり、夏蓮?あんたの声もいいし、その才能も夏音と同じで埋もらせるには惜しいけど…俺には違うんだ。そういう才能とかじゃなく本能で夏音の声じゃなきゃ嫌だ。見た目が一緒とかそんなの関係ないし。別に顔で好きになったわけでもないし。だからといって声だけとかそういうのじゃなくて。ただ、夏音じゃないとダメなんだ。それは何って言われても、本能というしかないけど。だから、身代わりとか、見分けがつかないなら引けとかそういう脅し、効かないから。諦めて。」
「だったらなんで奴隷になんかすんのよ。最初から好きって、愛してるって始まれないわけ?」
社長もそうだけど、あんたもなんでそんな回りくどいことしてるのよ。