第1章 ギャンブル
「スタッフさん、一番偉い人は?」
前室にそう言いながら、飛び込んできた人物に卒倒する。
「夏蓮、なにやって!!」
「それは私の台詞よ。夏音はもうこの撮影から下りなさい。私がやるから」
「それは、無理かなぁ」
カメラマンさんが間延びした感じで騒いでいる夏蓮に釘をさす。
「なんでです?背中なんだから誰でもいいじゃない?」
「だって、君、髪が長いだろ?背中が隠れたら意味ない。」
さすがの夏蓮もそう言い切られてぐうの音もでないようで黙り込んでしまう。
「…ごめん。役に立たなくて…」
「大丈夫、慣れてきたから、背中しか写んないし、ね?」
「ヌーブラでも胸見られるよ!!」
泣きそうな夏蓮を抱きしめる。
私たち、二人は完全なるシスコンだからどっちかが辛いことをしなくちゃいけない時は競うように自分が身代わりになると騒ぐ。特に夏蓮の方がその思いが強くて何でも私を優先させようとする。
こうなることが分っていたら仕事行って来るなんて言うんじゃなかった。
仕事の内容は私も分らなかったから言わなかったというか言えなかったが、双子という生き物は不思議で相手に対する嫌な予感というのは敏感に感じ取るから感づいてついて来たのだろう。
「そんな変態扱いしないでよ~」
スンリが悲しそうに言う。
「あんたが一番信用なんないのよ!!」
収まらない夏蓮がスンリに噛み付く。
あぁ~、夏蓮は気性が荒いから…
スンリ可愛そうに…
こんな夏蓮を初めて見るんだろう。
みんな、驚愕してる。
目立たないようにみんな猫かぶってたから…もちろん、夏蓮も。
「夏蓮ヌナ、ひどい~」
スンリが嘆く。
「ごめんね。落ち着かせるから…」
私は夏蓮を抱きしめて背を撫でて説得する。
「大丈夫、スンリは撮影終わったから、あとは紳士だけよ。ね?大丈夫。大丈夫…」
「夏音ヌナも何気にひどくない~」
スンリがそれを聞いて嘆いていたが私はそれどころじゃない。
夏蓮を安心させなきゃ…
最近、私が苦労続きだったからなぁ。
敏感にそれを感じ取って心が過敏になってるのよ。
双子はそういう力があるのか互いに相手のやつれ具合が手に取るように分ってしまう。
心配かけちゃったなぁ…