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ギャンブル

第1章 ギャンブル




「また、知られちゃったわね。」

紗英ちゃんの顔に疲れが見える。
無理させてるよね。心労が絶えないから…

「うん…あんまり知られたくない人だったな…」

あんまり、関わりたくない人の一番だった。
そういう人に限って関わることになるのよね。
避ければ避けるほどに天は関われと言うんだ。

「なに、あいつにかさねてんの?」

察しがいい紗英ちゃんはすべてお見通し。

「そうじゃないと言えば嘘になるなぁ…」

作詞家の気質なのか感慨に耽ってしまうのは自分の困ったところだ。
なんでも割り切れたら楽なのになぁ…
それが無理だから人間なんだけど…

「誰に誰をかさねてるって?」

聞き覚えがある怒ったような声に振り向く。

「ジヨン…作曲あるって…」

怒ってるのを知らないふりして返事をする。
上手く、かわして何も聞いてないふりしたけど、ジヨンは気づいてるよね。察しのいい人だから。
今日は渡りがないと思ってたけど…
最近は社長も顔出さないし、気を抜いてたのにな。
そういうときに限って知られてはならないようなことが起きる。
幸い、ジヨンは行き違いでタップには会わなかったらしい。
鉢合わせしてたらもっと怒ってるわね。

「身になんないから止めてきた。そういう時は何をしてもダメだろ?」

上手く話を反らされてもジヨンはしらないふりで私の話にのってくれる。

「…まぁね…待ってて、あと6曲歌ったら帰るから…」

「いい、歌いたいだけ歌え、待ってる。」

「ありがと…」

最近は本当に急かしたりせずにカウンターでビールを飲みながら私が歌うのを見てくれていた。

互いに感情を出さないで情を交わすことに慣れてきているのにこういう時に不意に胸が疼く。

大切にされてるのではないかという錯覚…

そんな自分を苛立たせながら、『金魚の箱』を歌った。

『感じないふりをして金魚姫のなか…』

そう思っているのは私か、ジヨンか。

今日もまた、金魚姫になる。

私が本当に金魚姫なのだろうか…ジヨンが金魚姫で私が抱いているのかもしれない。
感じないふりを必死でして…



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