第1章 ギャンブル
こんなに巧いのにこんな才能を埋もらせておくのは勿体無い。
「やめてください。」
それでも紗英ちゃんは頑なに断ってきた。
なんでそんなに拒むのかな?
「どうしたの?紗英ちゃん…た、タップさん?どうしてここに…」
引き上げてきた夏音ちゃんに気づかれた。
「こんばんは、バイトだってね。それにしては巧いのになんで社長に直談判しないの?」
夏音は困ったように笑って紗英ちゃんに大丈夫と言うと自分が韓国にやってきた経緯を話してくれた。
まさか、そんな理由があったなんて…
「そっか、潜伏してないといけないなんて知らなくて勝手なこと言ってごめん。出て行きたいのは夏音なのに…無神経だった…ごめん。」
「いいんです。誰でも怪しみますよ。こんなところで夜な夜な歌ってたら。」
「俺、夏音の歌、好きになった。また、来てもいい?」
「えっと…それは…」
「いいじゃん。決めた。ダメって言っても来る。ね」
俺は強引に押し切る。
夏音は困ったように笑っていたけど、同意してくれたことにしよう。
休みの散歩が楽しみになったな。