第1章 ギャンブル
久々の休みだった。気分がいいからこっそり夜中の街を散歩した。
あれ、こんなとこに店なんてできたっけ?
半年前にはテナントだった地下に繋がっているだろう店舗を上の階段から覗く。
なんか、好きな感じの店だ。レトロだし。喫茶店?飲み屋?
夜中にやってるなら飲み屋かな?
入っちゃお。飲み屋なら暗いしバレないだろ。
中に入ったらますます気に入った。すっごい古臭くて、やけに落ち着く。
カウンターに導かれるように座ったら、店員が話しかけてきた。
「なんにします?」
どっかで聞いたことのある声だ。どこだっけ?
声につられて顔を上げたら、よく見た顔だった。
相手も驚いてる。
「なんで、あなた…」
バックダンサーの紗英ちゃんがそこにいた。エプロンつけて。
「そっちこそ、バイト?」
「やだ、どうしよう。夏音、今、ステージ行ったよね…」
パニックなのか、慌てたように呟いていた。
「夏音ちゃんもいるの?」
「え、ぁ…」
言い篭もる紗英ちゃんの様子に気をとられていたらギターのいい音が聞こえてきた。
「お、演奏もあるの?」
俺はつられるようにステージに瞳を向けた。
なんか、見たことあるシルエットだなぁ…
『♪~…あなたがそっと笑ってくれるから~♪明くる朝、泣き止んでいるのさ~♪』
上から落ちてくるような声に瞳をこらす。
誰、よく、見なきゃ…
「…巧い…誰?…あれ、夏音ちゃん?」
「…ぇえ…」
力なく、答える紗英ちゃんにどうしたのと瞳を向ける。
「あれ?よく見たらみんなも…」
バックダンサーみんな揃ってる。
「みんなには黙っておいてくれます?ここでみんながバイトしてるの。」
紗英ちゃんが切羽詰ったように言ってくる。
「いいよ。でもなんで?バレてもみんな怒らないのに…」
「社長に反対されてて…」
「そうなんだ。話せば分る人なのに。俺、話そうか?」
「だ、大丈夫です。私から説得しますから」
「それより、社長に聴かせないの?これなら即デビューじゃない?やっぱり俺、話す?」