第1章 その名を呼ぶ。
野次馬A「な、なあアイツ血を出して倒れてるぜ・・・!」
野次馬B「け・・・警察とか呼んだ方良くない?」
野次馬C「おい、あの手品師ヤバいって!
さっさと逃げようぜ!!」
まるで人間じゃない化け物を見たような悲鳴が聞こえる。
一体全体なんだってんだ。
何が起きたのか知らないけど、我先にと向こうからこっちに逃げてくる野次馬。
私の目的地である店にはこの大通りを通るのが手っ取り早いのに・・・。
わらわらと蜘蛛の子が散らされるように、あっと言う間に野次馬がその場所から散って行く。
その野次馬が囲んでいた場所に、確かにそれは見えた。
月音「・・・・・・・・・?
・・・あれ・・・って、もしかして・・・・・・」
茶髪の青年「だ、っ誰か・・・!」
月音「!・・・どしたの青年。その子・・・すっごい怪我してるけど」
茶髪の青年「さっき、あの手品師みたいな人に龍ちゃんが・・・ともっ、友達が・・・!!
助け・・・っ助けて・・・!!」
また野次馬がザワつく。
お前らザワザワするだけならどっか行けし・・・。
ボロボロと涙を零しながら、私に必死に友達を助けてくれと伝えてくる全体的にパーマをかけてる茶髪の青年。
その腕の中には左肩から今も血を流しているヘアバンドで前髪を全部上げてる金髪の青年が居た。止血のつもりなのか、茶髪の青年は金髪の青年を抱き抱えている右手と逆の左手で必死に傷口を抑えている。
・・・・・・まったく。
どうしてこうも平和な時間ってのは長く続かないのかなあ。
月音「(・・・見間違いじゃなさそうだし、この騒ぎなら動くはず・・・。あの子幻術系上手だし)」
茶髪の青年「お願いしますっ・・・今も友達がオレ達を庇って・・・誰か・・・・・・誰か!!」
月音「“Castitas”」
茶髪の青年「え、?」
──フワ・・・
時刻は夜の7時。
活動範囲良好、活動時間良好。
私が日本語じゃないソレを呟けば、周囲に白とピンクが混ざった霧が拡がった。