第1章 その名を呼ぶ。
───吸血鬼が出る。
その被害者は首や腕に噛まれたあとがあって、全身の血が抜かれていた。
被害者はすでに数十人居る。────
月音「・・・で?だから?
そう言う理由があるから、買い出しに行くなって言いたかったの?」
行きつけのスーパーで買った物をレジ袋に入れながら、私は独り言のようにそう言った。
そう言われたからと言って、はいそうですか。と買い出しに行くのをやめる私ではない。
そりゃまあ、現に私も原因不明の重傷者が出たとかの噂は店に来るお客さんから聞いたけど。
月音「あーもう、解かったよ。
寄り道しないで帰るから・・・うん。・・・てか寧ろ、いつも寄り道させるのはどこの誰だったっけ?」
言い返して・・・と言うより正論を言ってやれば、私にしか聞こえない声の主はギクッ!とこれまた古典的な反応をしてきた。
まったく・・・。
心配してくれるのは嫌じゃないけど、実際に確証を持ってから言ってほしい。
月音「(・・・まあ、その噂が彼らにしろ単なる噂にしろ私としてはどっちでもいいんだけどね)」
買い出しも難なく終わらせ、私はスーパーを後にした。
スーパーのある商店街から私の店まで、歩いて10分だ。私の自宅、兼店。
だから、その通り道である大通りは必然的に通らないと帰れない・・・・・・ん、だけど・・・。
月音「・・・・・・数分前に言った事、前言撤回だねー」
その大通りに、何やら人だかり。
そして何やら騒がしい。
え、なんかイベントとかあったっけ?